千葉地方裁判所 平成8年(ワ)552号 判決 1998年1月13日
原告
河野誠司
右訴訟代理人弁護士
清水洋二
同
宮坂浩
同
今村核
被告
千葉県
右代表者知事
沼田武
右指定代理人
野村正彦
外七名
被告
青木正吉
外一名
被告ら訴訟代理人弁護士
佐藤正八
主文
一 被告千葉県は、原告に対し、金三六万円及びこれに対する平成五年三月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用はこれを一〇分し、その一を被告千葉県の負担とし、その余を原告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。ただし、被告千葉県が金三〇万円の担保を供するときは、右執行を免れることができる。
事実及び理由
第一 請求
被告らは、原告に対し、連帯して金三〇〇万円及びこれに対する平成五年三月三一日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
本件は、流山市の小学校の教員である原告が、当時の勤務校(新川小)の校長被告青木正吉(以下「被告青木」という)及び流山市教育委員会(以下「市教委」という)の学校教育部長被告武下直道(以下「被告武下」という)から平成五年四月一日付人事異動で他校(流山北小)へ転出するよう説明・説得を受けていた際、同年三月二二日に右校長に退職願(以下「本件退職願」という)を提出し、千葉県教育委員会から原告に対し三月三一日付退職承認処分(以下「本件退職承認処分」という)がなされたことについて、原告において、三月二四日と二九日の二回、被告青木及び被告武下に対し右退職の意思を撤回したのに、右被告両名は、これを千葉県教育委員会へ取次しなかったことにより、本件退職承認処分に至ってしまい、右処分の取消(平成七年一月一七日付の千葉県人事委員会の裁決)を得るまで原告は精神的にも経済的にも損害を被ったと主張して、被告青木及び被告武下に対しては、共同不法行為による損害賠償を求め、被告千葉県(以下「被告県」という)に対しては、当時費用負担職員であった被告青木及び被告武下の右不法行為につき国家賠償法三条一項に基づく費用負担者に対する損害賠償を求めている事案である。
一 争いのない事実等(但し、2(二)は弁論の全趣旨、3(一)(2)は被告武下本人と弁論の全趣旨、3(二)(1)(2)は被告県につき被告青木、被告武下各本人と弁論の全趣旨により容易に認められる。)
1 (当事者)
(一) 原告は、昭和四九年四月に千葉県の小学校教員として採用されて以来、一九年間にわたり流山市立新川小学校(以下「新川小」という)の教員として勤務していたところ、平成五年三月三一日に本件退職承認処分を受けたが、平成七年一月一九日付で新川小に復職となり、その後、同年四月一日付で流山市立流山北小学校(以下「流山北小」という)に異動になった。
(二) 被告青木は、平成四年四月から平成八年三月までの間、新川小の校長であり、被告県が費用負担する教育公務員であった。
(三) 被告武下は、平成四年四月から平成六年三月までの間、市教委(流山市教育委員会)事務局の職員で学校教育部長の地位にあった。
2 (本件退職願)
(一) 原告は、平成五年二月二三日ころ、当時の在勤校の校長被告青木から、流山市南部地区の学校への異動の提案を受け、その後、同年三月一九日、流山市役所において、当時の市教委部長であった被告武下から流山北小への異動の提案を受け、更に、三月二二日、新川小の校長室において、被告青木および被告武下と右人事異動のことで面談し、原告は、一貫して右異動を断っていたが、この日の夕刻、被告青木に対し本件退職願を提出した。
(二) 当時、流山市立小学校教員であった原告の任免に関する人事については、千葉県教育委員会に人事権があり、原告の退職願等の右人事に関する意思表示と手続書類は、在勤校の校長、市教委が順次取次いで、千葉県教育庁(千葉県教育委員会事務局)の東葛飾地方出張所を窓口に千葉県教育委員会に伝えられることになっていた。
3 (本件退職承認処分までの経過)
(一)(1) 被告青木は、平成五年三月二三日、新川小の校長室において、原告に対し、流山北小への異動の内示をし、また、被告武下は被告青木とともに翌二四日新川小の校長室において、原告と面談して、内示した異動を受けるよう説得するとともに退職の意思の確認もした。
(2) 同日(三月二四日)、被告武下が帰る際、原告が被告武下の車まで同行して、本件退職願に関し「身分上の保留をお願いします」との旨述べた。
(二)(1) 原告は、三月二九日、被告青木及び被告武下に電話して、千葉県教育庁学校教育部義務教育課や千葉県教育庁東葛飾地方出張所への同行を依頼したが、同人らはいずれも断った。
(2) 原告は、三月三〇日、新川小の校長室において、被告青木に退職願の撤回を申出し、さらに流山市役所において、被告武下に退職願の撤回を申出した。
(三)(1) 被告青木及び被告武下は、本件退職願を市教委経由で千葉県教育委員会に取次する手続をしたが、原告の右(一)(2)、同(二)(2)の本件退職願の撤回・保留の意思は伝える手続をしなかった。
(2) 千葉県教育委員会は、三月三一日、本件退職承認処分の発令をし、原告は辞令の交付を受けた。
4 (本件退職承認処分の取消)
その後、原告は平成五年五月千葉県人事委員会に対し本件退職承認処分の取消を求める審査請求をし、同人事委員会は、平成七年一月一七日付で本件退職承認処分を取消す旨の裁決をし、原告はこれにより前記1(一)のとおり復職した。
二 争点
1 被告県の責任原因の有無に関し、
(一) 本件退職願撤回(三月二四日、三月二九日)の有無。
(二) 仮に退職願の撤回がある場合、それが信義則上許されないといえるか否か。
(三) 退職願の撤回の撤回(三月三一日異議なく辞令受領)の有無。
(四) 仮に本件退職願の撤回がある場合これに対する被告武下及び被告青木の措置に違法といえるものがあったか。
(五) 仮に被告武下の行為が違法な場合、被告武下は、当時県が費用負担する者であったといえるか。
2 被告青木及び被告武下の個人責任の有無。
3 被告らのうちいずれかに責任原因が認められる場合、これと相当因果関係にある損害の内容及びその額。
第三 争点に対する判断
一 本件退職願の撤回の有無について
1 本件退職願とその後の事実経過について、前記争いのない事実、証拠(甲二ないし六、乙一、乙三、乙四、乙八ないし一八、乙二三、乙二四、原告及び被告青木、被告武下の各本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば次のような事実が認められる。
(一) (平成五年三月二四日のこと)
(1) 原告は、前記争いのない事実2(一)のとおり、当時の在勤校の校長被告青木に対し本件退職願を提出した。
その後、被告武下と被告青木は、三月二四日、新川小の校長室において、原告に対し、流山北小への異動を勧めるとともに、本件退職願を提出してよいかどうか訊いた。
原告は、当時、本件退職願を一時の感情で提出したが撤回して異動する気持ちになっていたので、被告らに対し本件退職願は自分で持っていて、なお考えた上で辞めるということであれば自分で千葉県教育庁東葛飾地方出張所に持って行きたいと述べたが、被告武下は、「手続上退職願は校長から市教委が受取り、市教委が千葉県教育委員会に提出するものであるから、原告が千葉県教育庁東葛飾地方出張所へ直接持っていくことはできないので、自分が預かっておく」と説明し、本件退職願を預かった。
そして、被告武下が新川小から帰ろうとしたとき、原告は被告武下を追いかけていき、「身分上の保留をお願いしたい」ということを言ったが、被告武下は、そのような話は被告青木を通じてするようにと指示し、また、原告が休職のことを言っているのかとも思い、そのようなことは病気などの理由がないと出来ないと説明した。
しかし、原告は、被告青木に対する不信感もあって、退職願の撤回について被告青木には何も言わなかった。
(2) 原告は、右三月二四日昼過ぎ、教員養成所の卒論担当であった樋口誠太郎(以下「樋口」という)に電話で相談し、異動への不満等から本件退職願を提出したが、その後流山北小へ異動する気持になったこと、これを被告青木にはまだ伝えてないこと、を話したところ、樋口は、同日午後一時から二時半くらいまでの間に、新川小へ電話をし、外出中の被告青木に代わって電話口に出た教頭に対し、原告との教員養成所の関係を告げたうえ、「原告が被告青木の指示に従って転任する気になった」という趣旨の話をし、この話は、外出先から戻った被告青木に右教頭からの伝言で伝えられた。
(3) なお、本件証拠上は、本件退職願の撤回に関し、三月二九日までは、原告から被告青木又は被告武下に対し右(1)(2)以上の直接間接の言動があったことは認められない。
(二) (平成五年三月二九日のこと)
(1) 被告青木は、三月二九日午前九時ころ、原告に対し、本件退職承認処分の辞令がおりたこと、退職手続の書類があるから、翌日の三〇日は早めに学校に来るよう指示した。
(2) 原告は、退職になるとは思っていなかったので、右指示を受けてすぐに樋口に電話で相談するなどし、千葉県教育庁東葛飾地方出張所と千葉県教育庁学校教育部義務教育課へ被告青木と被告竹下と一緒に行って謝ってもらえば何とかなるのではないかとのアドバイスを受け、被告武下及び被告青木に電話で本件退職願の撤回の為に右同行を依頼したが、私用があるとか忙しいとかの理由で一緒に行けないと断られた。
被告青木は、原告との右電話の後被告武下に電話して、原告との右電話の内容を報告し、被告武下は、原告・被告青木との電話後、昼ころ千葉県教育庁東葛飾地方出張所に電話をかけ、原告から退職願の撤回の申出があったので、その件で原告が行くかもしれないと連絡した。
(3) 原告は、右同日、一人で千葉県教育庁東葛飾地方出張所に行ったが、所長からは被告青木及び被告武下を同行するようにと言われた。その後、原告は、千葉県教育庁学校教育部義務教育課に行き、そこの係長の助言に従って、被告青木及び被告武下の自宅に再度電話をしたが、被告青木は不在であり、被告武下は被告青木に相談しないと本件退職願の撤回の扱いについては決められないと答えた。
(三) (平成五年三月三〇日及び三一日のこと)
(1) 原告は、三月三〇日に、まず市教委の石井教育長宅を訪れ、次に被告青木と校長室で会い、そして市教委の被告武下を訪れ、それぞれ退職願の撤回を求めたが、いずれも不可能と言われた。その後、原告は千葉県人事委員会へ行き、本件退職願についての相談をした。
(2) 被告青木は、三月三一日午前中から原告宅に電話をしていたが、原告とは連絡が取れなかったので、午後五時一五分ころ帰宅した。
その後、原告は新川小に現れて、午後六時半ころ、校長室において、市教委の石井教育長、被告武下などから本件退職承認処分の辞令書を受取ったが、退職の記念品は受け取らなかった。
なお、この時、原告は、退職の問題については既に前日に千葉県人事委員会に相談しており、この問題のことで今後新川小に来たくなかったし、また時間も遅くなっており、ここでの混乱を避けるため右辞令書を受取ったまでで、退職するつもりになっていたわけではなかった。
2 右事実関係によれば、原告は、意に添わない人事異動の説得を受けて感情的になり、平成五年三月二二日に本件退職願を当時の在勤校の校長被告青木に提出したものの、その後考えを変えて、退職願を撤回し人事異動を受ける気持になったが、被告青木との感情的なしこりから、すぐには、被告青木に直接退職願撤回の意思を伝えなかったものの、三月二四日に、市教委学校教育部長の被告武下に対して直接口頭で「身分上の保留」の希望を伝え、校長の被告青木に対しては、樋口を介して電話で、「退職願を撤回して内示された人事異動に応じる。」との意思を伝えてもらったもので、退職願撤回の右意思表示が必ずしも明確ではなく正式な手続にそったものではなかったとはいえ、原告が本件退職願を撤回する意向であることは、右被告らには十分伝わる程度の内容のものであったといえる。
また、原告は、その後も三月二九日に被告武下及び被告青木に対し本件退職願の撤回の意思を電話で明確に伝え、その為の協力を求め、協力が得られないと考えると、一人で千葉県教育庁の担当課等を訪問して本件退職願撤回の行動を起こしていて、この時点では、原告は、千葉県教育委員会や被告武下、被告青木に対し、本件退職願撤回の意思を明確に伝えていたといえる。
3 これについて、被告らは、原告が退職辞令の受領により退職願撤回の意思を再度撤回したとか、原告が退職願を撤回するのは信義則に反するとか主張する。
しかし、原告の退職辞令受領に関しては、前記1の事実によれば、当該辞令交付は、時間外に校長以外の者からの異例な形で行われたものであり、原告はその際記念品の受取を拒否しており、これに原告が、前日まで退職願撤回に動いていたことや、その後ほどなく原告が千葉県人事委員会に前記審査請求をしている等の事情がみられるのであって、これらの事情からは、原告が三月三一日に辞令を受取ったのは単に辞令交付をめぐる混乱を避ける為であったとみられ、これにより退職願撤回の意思を再度撤回したとは到底みられない。
また、原告が退職願撤回の意思を明示したのが、本件退職承認処分の発令の二日前である三月二九日であり、これが千葉県教育委員会や市教委の定数管理・人事異動に支障を生ずる余地があるとしても、退職関係も含めて人事については発令までは原則としていつでも撤回されうるものとされているうえ、本件では、原告は、三月二四日から退職願撤回の意向を直接間接に被告武下や被告青木に伝えていたのは前記1のとおりであるから、他に特段の事情が見出せない本件では、原告の本件退職願の撤回を信義則に反するとまでいうことはできない。
従って、被告らの右主張は採用できない。
二 被告県の責任原因について
1 次に、公務員において、自由意思で退職する場合は、一旦退職の意思表示をして退職願等の手続書類を提出した後であっても、これに対する退職承認処分があるまでは、退職の意思表示の撤回は原則として自由に為すことができるものと解されている。
従って、原告から右一2のとおりの本件退職願の撤回の意向を知った平成五年三月二四日の時点では、被告青木は、原告の所属学校長として市教委に対する教員人事の具申権を有する者であり、被告武下は原告の所属校を管理する市教委の部長として教員人事に関する県教委に対する内申権にかかる事務を取扱う者であったから、それぞれ原告の右退職願撤回の意思を取次し必要な手段措置をすべき職務上の義務があったといえるし、原告から本件退職願撤回の明確な意思を伝えられた三月二九日の時点では、三月三一日付本件退職承認処分の発令を控えて、特に速やかに右措置をすべき職務上の義務があったといえる。
2 しかしながら、被告武下及び被告青木は、前記一1の事実経過によれば、原告からの本件退職願撤回の意向や意思に接して、原告の意思を再確認してこれを市教委、千葉県教育委員会に伝える手続をせずに、本件退職願に基づく手続が進むのを放置したものであって、そのことが、後に取消された本件退職承認処分の発令に至る一因となったものであるから、被告武下及び被告青木の右対応は、右1の職務上の義務に違反した違法な職務執行であり、それにつき、被告武下及び被告青木には少なくとも過失があったものといえる。
3 そして、被告青木は当時被告県が費用を負担していた教育公務員であることは争いがないし、また、被告武下についても、証拠(甲四、乙一八、乙二〇ないし二二、被告武下本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば、昭和四二年から平成二年までの相当の長期間にわたって千葉県の公立小学校の教員として勤務し、その後四年間市教委の職員を務めた後、再び千葉県の公立小学校の校長として勤務し、右公立小学校在勤中は被告県が費用を負担する公務員であったこと、そして右四年間も今後の退職においては被告県が費用を負担する公務員としての在職期間とみなされこの通算期間にしたがって退職金が計算されることになること、が認められ、これらの事情からすれば、被告武下は、当時一時的に流山市から給与等の支給を受けていたとはいえ、実質的にみれば、被告県が費用の一部を負担していた者である、と解するのが相当である。
4 従って、被告県は、国家賠償法三条一項に基づき、原告の本件退職願の撤回の扱いに関する被告青木及び被告武下の右過失による違法な対応により被った損害を賠償する責任があるということができる。
三 被告青木及び被告武下の個人責任について
被告青木及び被告武下は、右1のとおり、原告の本件退職願撤回の意向・意思への対応につき、少なくとも過失による違法行為を行ったということができるが、前記一1のとおり、原告の退職願撤回の意向(三月二四日)が必ずしも直接の又は明確なものでなかったことや原告の退職願撤回の明示(三月二九日)が退職予定日の前々日で手続的に難しい時機であったことを考慮すれば、当該違法行為につき、右被告両名において、原告の本件退職願撤回の意思の把握が十分ではなかったことや手続的に間に合わないとし右被告両名が対応できる段階ではない等と考えたとみられる判断の誤りに過失があったといえるものの、それ以上に、悪意や重過失があったとまではいえない。
そうすると、被告青木及び被告武下のこれらの行為(本件退職願撤回への対応)は、公権力の行使を補佐する公務員の職務行為に関するものということができるから、右被告両名につき悪意や重過失その他の特段の事情が見出せない本件では、被告千葉県が損害賠償責任を負うものであって、右被告両名が個人として原告に対して共同不法行為による損害賠償責任を負うものではないといえる。
四 損害の内容及びその額
1 経済的損害について
これについて、原告は、千葉県人事委員会での審査請求手続を本訴原告訴訟代理人らに委任したことにより、四〇〇万円以上出費することになったと主張するけれども、これを認めるに足りる的確な証拠はない。
なお、原告の主張に沿う内容の原告本人供述があるが、内容的にも曖昧でかつ具体的根拠に乏しく信用できない。
2 精神的損害について
前記認定事実によれば、原告は、被告青木及び被告武下の本件退職願撤回に対する違法な対応によって精神的苦痛を被ったと認められる。
しかしながら、前記争いのない事実等及び前記一1の認定事実のとおり、本件退職承認処分は千葉県人事委員会の裁決により既に取消されていること、そして原告は右取消後直ちに復職していること、原告は当時被告青木や被告武下から本件退職願を正式に提出しても良いかどうか何回か意思確認を受けたりしたが、被告青木に対する不信感から、退職願撤回の気持ちを率直にかつ直接に表明しなかったことが本件退職承認処分に至る一因になったことなどの事情を考慮すれば、右精神的苦痛に対する慰謝料の額は金三〇万円とするのが相当である。
3 弁護士費用について
原告が本件訴訟の提起及び追行を原告訴訟代理人らに委任し、報酬等の支払を約していると認めることができるところ、本件事案の内容、審理の経過、認容額等に鑑みると、本件違法行為と相当因果関係のある損害としては金六万円と認めるのが相当である。
第四 結論
以上により、原告の本訴請求のうち、被告千葉県に対する請求は、不法行為による損害金三六万円及びこれに対する平成五年三月三一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容することとし、被告千葉県に対するその余の請求並びに被告青木及び被告武下に対する請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法六一条、六四条本文を、仮執行宣言及び仮執行免脱宣言につき、同法二五九条一項及び三項をそれぞれ適用し、平成八年一二月四日に終結した口頭弁論に基づき、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官千德輝夫 裁判官三島琢 裁判官大久保正道は、転補のため署名捺印できない。裁判長裁判官千德輝夫)